2020/11/12 11:44

今では当たり前のようにファッションアイテムとしての地位を確立しているアウトドアジャケット。作業服であったアウトドアジャケットがなぜファッションアイテムとしての地位を確立したのでしょうか。ここではアウトドアジャケットの歴史や魅力をご紹介します。

機能重視のアウトドアジャケット

マウンテンパーカなどアウトドアでの過酷な環境下に耐えうるジャケットがアメカジを始め、おしゃれファッションアイテムとなったのはなぜでしょうか。デザイン性よりも機能性を重視したアウトドアジャケットは、余計な飾り気がない機能美に注目されたからでしょう。 また昨今のヴィンテージ市場の盛り上がりにより、先人たちの機能性を重視しライフスタイルに寄り添ったヴィンテージ衣料が我々現代人にとって新鮮に写る点も注目を集めているファクターとなっています。

その道のプロフェッショナルが着用するアウトドアジャケットは、普段使いするにはオーバースペック。ですが、本物という言葉に弱い我々はオーバースペックと分かっていながらプロユースの洋服を好んで着用するのです。

アウトドアジャケットの種類

アウトドアジャケットというと、真っ先に思い浮かべるのはマウンテンパーカでしょう。しかしマウンテンパーカが世に生まれる以前、アウトドアがレジャーではなく生活の一部だったことを想像してください。アウトドアジャケットにも歴史があり、種類があるのです。ここからはアウトドアジャケットの代表格とされる2種と歴史を簡単にご紹介します。

ハンティングジャケット

狩猟大国と言われるアメリカに於いて、ハンティングとは娯楽以上に山間部生活する者の日々の糧として欠かせないアウトドアアクティビティ。そのため活動着に高い機能性を求めるのは必然であり、英国貴族が嗜んだような様式美を重んじるそれとはまるで見解が異なっています。

近年では、そのような機能性に優れたディテールを各所に装備したアメリカ由来のハンティングウエアが機能美として受け入れられ、ファッションブランドからも同様のジャケットやベストがリリースされています。そのことからもアーバンヘビーデューティーの必須アイテムとして加えてほしい1着。

1930~60年代頃にかけては、私たちにも馴染み深いダック地のものが主流となって、数々の有名ブランドが肩を並べました。ダックスバックやヒンソン、エル・エル・ビーンなどがその代表格とされ、今も古着市場で不動の人気を誇っています。

フィッシングジャケット

アメリカのフィッシングシーンは、当初は英国から渡った上流階級たちのフィールドスポーツとして発展したと考えられています。戦前のそれらはウールが主流であり、30年代頃からコットン仕様が登場し始めると、撥水性に優れたオイルドコットンなども用いられ、戦後のオートメーション化により50年代以降は安価且つ利便性を考慮したプロダクトへと変遷していきました。

フィッシングとはいえ、ウエアの多くは渓流など淡水釣りを視野に入れたものが大半であり、ウェーダーに合わせるよう、短めの丈が一般的。またフライフィッシング用に使う毛鉤を掛けるシープスキンパッチやウールパッチ、ライディングネットを吊り下げるためのDリングを備えるのが戦後のベーシックなスタイルとなりました。

また、片手に竿を持ちながら仕掛けを変えられるよう、60年代以降はボタンからベルクロやジップポケットへと刷新するブランドも。日本でも根強い人気を誇るコロンビアやエル・エル・ビーン製プロダクトからも、そんな変遷が見てとれます。

王道とはひと味違うユニークなルックスと、多ポケット使いのシンボリックなディテールは、昨今のストリートブランドにも絶大な影響を与えています。

マウンテンパーカ

アウトドアジャケットの最大の魅力は、街で着るには少々オーバースペックとも言える機能性の高さにあります。フィッシングジャケットに備え付けられた数多くのポケットや、猟師が獲物を持ち運ぶために搭載されたゲームポケットなどがそれに当たります。今では定番となっているアウトドアブランドによる名作も同様で、スポーツとしてアウトドアが確立以前から森林伐採者や猟師に愛されていたフィルソンの《マッキーノ・クルーザー》や、革新的な機能性素材の《60/40クロス》を用いたマウンテンパー販売することが目的。ファッション的なデザインは二の次でした。

そんな機能性に優れたディテールが機能美として受け入れられ、いつしかファッションアイテムとして認識されるようになったのは小林泰彦氏による『ヘビーデューティの本』の功績でしょう。アウトドアアイテムをファッションアイテムとして捉える考え方が、急速に日本にも広まりました。今となってはアウトドアシーンだけでなく、タウンユースにも欠かせないアイテムとしての地位を確立するまでに至りました。

アウトドアジャケットの人気ブランド

アウトドアがレジャーとなる以前から、森林伐採者や猟師たちに愛され続けてきたブランドがあります。ここでは人気のブランドをご紹介します。

Sierra Designs

1965年、カリフォルニア州バークレーに位置したアウトドアショップ「スキーハット」に籍を置いていたジョージ・マークスとボブ・スワンソンは、海で激しい暴風雨に巻き込まれ遭難、生還を経てギアやウエアの重要性を痛感したと言う。

彼らはまず自宅のガレージにてテントを製作し、同年にガレージブランド《シエラデザインズ》をスタート。それから3年後にあたる1968年にはヨコ糸にコットン58%、タテ糸にナイロン42%という約60対40の混紡比率の看板素材《60/40クロス》の開発に成功。同素材を採用した自社初のアパレルとしてマウンテンパーカを発表。今もなお名作として継続販売されています。 70年代後半には、アイビーブームの余波から日本でもヘビーデューティが新たなキーワードになるとシエラデザインズもいよいよ上陸。以来、数多くの人気モデルを輩出し、名門としての地位を築き上げています。

Barbour(s)

1894年、イングランドのサウスシールズに設立された、英国アウトドア&ライフスタイルを体現するブランド。港湾労働者のために作られた、オイルドクロス製の防水ジャケットのたぐいまれな性能で名声を広め、世界大戦時には英国軍にアイテムを供給するなど数々の実績を残してきました。

その功績が認められ、79年にはエディンバラ公、82年にはエリザベス女王、87年にはチャールズ皇太子よりロイヤルワラントを授かっています。

L.L.BEAN

創始者であるエル・エル・ビーンはハンティングから戻ったある日、ブーツ内に水が染み込み冷たく濡れてしまった足元をみて、水に強いハンティングブーツの開発に着手します。それは当時大変革新的なアイデアでゴムのボトムに革のアッパーを縫い付けるものでした。そして1911年今でもビーン・ブーツとして世界中から愛されるハンティングブーツを発明します。ところがほとんどが不良品として返品。レオン・レオンウッド・ビーンは返金し、問題点を解決したブーツを1921年北極探検隊であるアダム・ドナルド・マクミラン氏が着用したことで、品質の良さを認められることになります。

ブーツだけではなく1924年には名作メインダックハンティングコートを販売。これは瞬く間にハンターたちに受け入れられ人気商品になりました。そして1944年にはエル・エル・ビーンのもう1つの人気商品通称ボート&トートが作られます。もともとは木材や氷を運ぶために作られたこのバッグは現代のトートバッグのデザインの原型になったと言われています。

続きはこちら